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皆さんこんにちは。
【訪問看護ステーションぽの】の更新担当の中西です。
さて今回は
~支援計画~
ということで、精神訪問看護において支援計画がなぜ重要なのか、その作成と運用に込めるべき視点やポイントを、現場に即した形で深く解説していきます。
精神訪問看護は、ただ体調を見守るだけのサービスではありません。
そこには、その人が“自分らしく地域で生きる”ことを支えるプロセスがあり、
その中心にあるのが、「支援計画」です。
「毎回訪問して、会話して、それで十分じゃないの?」
そんなふうに思うかもしれません。
けれど本当に大切なのは、“その訪問の積み重ねで、どこへ向かうのか”を可視化すること。
精神訪問看護における支援計画とは、
利用者の生活状況、健康状態、希望や課題に基づき、目標と支援内容を整理した文書のことです。
目的は大きく分けて3つ
利用者本人と支援者の「目標の共有」
看護師間・他職種間の「支援内容の統一」
支援の「評価と見直し」の基準となる
👉Point: 支援計画は「行政への提出のための書類」ではなく、
“生活と回復を支えるナビゲーション”なのです。
精神疾患のある方は、それぞれに異なる経歴・家庭環境・価値観・病状の波があります。
統合失調症で家族と疎遠なAさん
双極性障害で職場復帰を目指すBさん
ひきこもり傾向のある発達障害のCさん
支援計画は、“その人にとっての意味ある生活”をベースに設計されなければなりません。
たとえば、毎回こうした訪問になっていないでしょうか?
「特に変わりないですか?」→「はい、ないです」→雑談で終わる
看護師ごとに対応が違い、本人が混乱
訪問記録は“安定しています”の一言だけ
これは、支援の目的が共有されていない=計画が形骸化している状態です。
精神訪問看護は、医療的な安定だけでなく、その人らしい生き方=リカバリーを支えることが求められます。
「外出できるようになりたい」
「朝起きて生活リズムを整えたい」
「家族ともう一度話せるようになりたい」
これらの思いを“具体的な目標”に翻訳し、達成の道筋を見える化するのが支援計画です。
症状の特徴と変動性
日常生活の自立度(食事・金銭・服薬など)
社会資源の活用状況
本人の希望・不安・強み
👉Point: アセスメントは“事実の収集”、支援計画は“未来への設計”。
良くない例 | よい例 |
---|---|
社会参加を目指す | 週1回の就労支援事業所への参加を目標にする |
安定した生活を送る | 毎朝7時に起き、朝食をとることを1ヶ月続ける |
S:具体的(Specific)
M:測定可能(Measurable)
A:達成可能(Achievable)
R:関連性がある(Relevant)
T:期限がある(Time-bound)
面接による生活リズムの調整支援
服薬自己管理の確認と動機づけ
家族関係の緩衝役としての傾聴
医師との情報共有による再発予防策の立案
👉Point: 看護師が変わっても、支援の方向性がブレないようにする。
月1回のケースカンファレンス
訪問記録からの振り返り
本人との面談による進捗確認
必要に応じた支援計画の更新
計画の一部を本人にも共有(簡略版)
本人の目標や希望の変化をこまめに反映
成果や変化をフィードバックすることで「できた」という実感を共有
利用者本人が「次の目標」を自分で語れるようになる
訪問が“単なる見守り”から“成長の伴走”になる
支援チームが同じ方向を向ける
再発・再入院の予防につながる
家族との関係や社会参加が少しずつ進む
精神訪問看護において支援計画とは、
単なる書類ではなく、その人の人生に並走する「地図」のような存在です。
そこに描くのは
☑ 病気を超えて、
☑ 社会の中で、
☑ 自分らしく生きる未来。
訪問看護師は、言葉にならない思いを聴き取り、
目標という形にし、毎回の支援の中で一歩ずつ実現していきます。
それが、精神訪問看護の「支援計画」が持つ、本当の価値です。
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皆さんこんにちは。
【訪問看護ステーションぽの】の更新担当の中西です。
さて今回は
~アセスメント~
ということで、精神訪問看護においてなぜアセスメントが重要なのか、その目的・構造・実践方法・注意点を深く掘り下げてご紹介します。
「こんにちは、体調いかがですか?」
精神訪問看護の現場では、そんな何気ないやりとりから始まる1時間が、
その人の生活と回復を大きく左右することも少なくありません。
しかし、ただ様子を見るだけでは、真の支援にはつながりません。
そこに必要なのが、“アセスメント”という看護の視点です。
アセスメントとは、患者の状態や生活状況を多面的に観察・聴取・分析し、適切な支援方針を考える一連の専門的行為です。
精神科看護においては、以下のような要素が特に重視されます
項目 | 内容 |
---|---|
症状の変化 | 幻聴・妄想・抑うつ・不安・興奮などの有無と変動 |
服薬状況 | 服薬遵守・副作用・認識の有無 |
生活状況 | 食事、睡眠、衛生、金銭管理、近隣関係など |
社会関係 | 家族との関係、支援者とのやりとり、孤立感 |
本人の語り | 希望・不安・将来の思い・病識(病気の自覚)など |
👉Point: 精神訪問看護では、「目に見える異変が少ない」からこそ、
“わずかな言動や空気感”を丁寧に読み取る技術=アセスメント力が求められます。
統合失調症や双極性障害などの慢性精神疾患では、病識の欠如(自分が病気だという自覚のなさ)がしばしば見られます。
本人:「元気になったから薬はもういらない」
看護師:「表面的には元気でも、思考の飛躍や表情の硬さが目立つ」
このように、表現されない「潜在的な危機」に気づくのがアセスメントの力です。
精神訪問看護の現場では、病院とは異なり「生活の中」に支援が入り込むため、
患者本人だけでなく、家族や周囲の状況も含めて把握する必要があります。
室内の様子(散らかり具合、食べ物の有無)
家族の表情(疲弊感、否定的態度)
地域との関係性(近隣トラブル、孤立)
👉Point: これらの「生活の現場」からの情報が、
支援方針や関係機関との連携に直結します。
感覚 | 観察例 |
---|---|
視覚 | 表情、姿勢、服装、部屋の状態 |
聴覚 | 声のトーン、発語の量、話の流れ |
嗅覚 | 体臭、部屋の衛生状態(ゴミ・たばこ・食べ物) |
触覚 | 握手の強さ(拒否感・親密感)など |
直感 | いつもと「何かが違う」という違和感の察知 |
患者の発言はしばしば間接的です。
「眠れてますか?」→「まあまあです(実は昼夜逆転)」
「困ってることありますか?」→「特にないです(実は家族と口もきいてない)」
👉Point: “本音”は質問の仕方と関係性の質で変わる。
開かれた質問と沈黙を使いこなす力が重要です。
精神科では、“チーム支援”が基本です。
アセスメント結果は看護記録に丁寧に残すこと
訪問看護師同士、主治医、ケースワーカー、就労支援員などと情報を共有し方針を統一する
支援経過を“見える化”することで、患者本人にも安心を提供
落とし穴 | 解説 |
---|---|
表面的な「安定」に安心してしまう | 落ち着いて見えても、孤立・絶望感が深まっていることも |
言葉に頼りすぎる | 認知機能の低下や語彙の乏しさにより、語れない人も多い |
主観的に判断しすぎる | 「あの人は大丈夫」は危険。客観的視点と記録が重要 |
精神訪問看護では、アセスメントそのものが患者との信頼関係を築くプロセスでもあります。
「この人は、ちゃんと私を見てくれている」
「話すとホッとする。否定されない」
「また来てくれると嬉しい」
この感覚が積み重なることで、
拒否的だった人が少しずつ心を開き、自立への一歩を踏み出すのです。
☑ 表に出ない異変を見つけ出す「観察力」
☑ 支援の方向性を導く「分析力」
☑ 本人と向き合う「関係構築力」
この3つが融合した、まさに専門職の核心的スキルです。
「見た目は元気でも、実は…」
「いつも通りだけど、なんだか違う」
そんな“微細な変化”に気づけるかどうかが、
再発を防ぎ、地域で生きる力を育てるカギになるのです。
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